社長講話

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代表取締役社長

磯崎 功典

Isozaki Yoshinori

キャリア採用で入社されたみなさんへ向けた社長講演では、磯崎社長から、「自分自身がどのようなキャリアを積んできたか」、「思い出深い経験から何を学んだか」、そして、「キャリア採用者に期待すること」について語っていただいた。

今回の“キャリアの集い”にかける期待

私は長年、キャリア採用で入社された方と何らかの形でお話をしたいと思っていたので、今日は大変楽しみにしていました。

新卒入社社員の場合、入社後すぐに入社式があり、社長講演や懇親会の機会がありますが、キャリア採用で入社された方の場合、基本的に入社式はありません。さらに、同時期に入社した人との接点も少なく、気分的に取り残されてしまっているということもあるのではないかと、ずっと懸念していました。

私はキャリア採用のみなさんが、KIRINの大きな力になると信じています。様々な経験を積んできた方が、会社の風土をダイナミックに変えてくれるはずだと。ですので、本日の“キャリアの集い”を開催できたことを大変嬉しく思っています。

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経営課題の前に階層なし

はじめに少し、私のキャリアの話をしたいと思います。

私は大学卒業後の1977年に、キリンビールに入社いたしました。最初は神戸支店で営業を7年間担当していました。当時、スーパーマーケットはありましたが、コンビニエンスストアは一軒もない時代です。さらにお酒の販売免許を持っているスーパーマーケットも少なく、主にお酒は全国15万軒の独立したお酒屋さんで販売されていました。

当時のキリンビールは、多角化事業としてビール以外にも小岩井乳業の乳製品などを販売していました。私は自分の希望で乳製品の担当に。営業としてスーパーを周る中で定点観測をしていると、色々な気づきがありました。特に、ビールの売れ行きを見ていると面白いことが分かりました。

私が担当していたスーパーのうち3~5軒はお酒を扱っていました。当時は、瓶ビールの構成比が80~90%で、缶はわずか。しかし、売場で奥様方が買うビールは、瓶ビールではありません。手に取るのは缶ビール。それはそうですよね。奥様たちは赤ちゃんをベビーカーに乗せて買い物をしています。重い瓶ビールを買うわけがありません。

神戸における缶ビール市場は70%と言われていましたが、私が担当していたスーパーを見る限り50%もないと思いました。お店の担当者にデータを聞いたところ、案の定50%を割っていました。そこで一つの疑問が浮かびます。これまでは全国15万軒のお酒屋さんが瓶ビールをプッシュし、消費者のお家に宅配する時代でしたが、もし仮に消費者が自分でビールを選ぶようになったら、キリンはシェアを取れるのだろうか?と。

あるとき、社長が神戸に来た際に、普段から抱えていた課題や問題をぶつけてみました。
「必ず消費者は、瓶から缶を選択するようになります。今は免許制度で守られていますが、やがて緩和されてどのスーパーマーケットでも免許が下りたら、キリンはとてつもなくシェアが下がるでしょう。缶ビールの資材が高いのは分かりますが、ボリュームが増えればコストを抑えられるのは明らかなので、我々は今から缶ビール対策をすべきだと思います」と。

すると、社長は、「我々は国税庁に守られているビジネスだ。税務署は簡単にスーパーに免許を出すわけがない」と言いました。ですが私は引き下がらず、「ピーター・ドラッカーも言っています。豊かな時代は消費者が強い、と。今は規制があったとしても、徐々に緩和されてくるに決まっています」と言いました。社長には「理屈っぽい人だね、君は」と半ば飽きられましたが、昔から何でも思ったことをずけずけと言ってしまうところがありました(笑)

この出来事を経験し、“経営課題の前に階層なし”だと実感しました。会社で何年働いているかは全く関係ない。その道のプロの声に耳を傾けるべきだと。それは、今日集まっていただいたキャリア採用の方も、よく覚えていてほしいと思っています。

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“一番辛いこと、ハードなことをやる” それがリーダーの務め

私自身がみなさんに伝えていきたいのは、ぜひ修羅場の経験を積んでほしいということです。人生には色々なコースがあります。イージーなコースもあれば、ハードなコースもある。そもそも人間は怠け者ですから、イージーなコースを選びたがる。ハードコースはしんどく辛いものですが、意外と問題がスッと解決することもあります。私の経験からすると、やはり仕事はハードなコースを選んだほうがいい。例え上手くいかなくても、自分自身がそれによって鍛えられるからです。色々な修羅場をくぐり抜けてきたリーダーやマネージャーは頼りがいがあります。メンバーからの信頼があります。できれば、みなさんにはそういった厳しいところに挑んでいただきたいと思っています。

この、“キャリアの集い”にはマネージャーの方も、そうではない方も、これからマネージャーになる方もいらっしゃると思いますが、ぜひ覚えていていただきたいことがあります。

リーダーというのは一番辛いこと、人が一番嫌がること、面倒くさいこと、怖いこと、そしてハードなことをやっていれば、メンバーは何も言わなくても付いてくる、ということです。一方的に怒っても誰も付いてきません。ましてやボーナスの査定や人事異動をちらつかせたりしても、人は付いてきません。リーダーが正しいことを率先して、手本を見せる。それによってメンバーは本当に心から納得してくれるはずです。それをしなければ、「怒られるのが嫌だから、やったふりでもするか」ということにもなりかねません。

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イノベーションを起こす、
実現のキードライバーが「多様性(Diversity)」

最後に、皆さんにKIRINの価値観にもある「多様性(Diversity)」についてお話したいと思います。

イノベーションを起こすためには多様性が欠かせません。私が期待しているのは、破壊的なイノベーションです。どうしてもプロパーとして働いてきた方々だけでは、イノベーションを起こすことが難しい。なぜなら過度な成功体験に縛られて、新しいことに踏み出せないからです。イノベーションのためには、ある種の壁やバイアスを溶かしていくことが大事。そのための多様性だと私は考えています。当社は今後もキャリア採用に注力し、採用数を拡大していく予定ですので、さらに多様性が高まってくると思います。プロパーの方も、みなさん方の行動を通して新たな気づきを得るでしょう。そして会社の中で意識革命が生まれ、イノベーションが生まれるのだと思います。

その一方で、キャリア採用の方がお困りになることもいっぱいあると思います。それは冒頭にもお話ししましたが、孤立感を感じるときがあるかもしれないということです。キャリア採用の方の多様性をきちんと発揮するためには、我々役員がパトロンになることです。本当に困ったことがあったときには、我々がみなさん方を守っていかないといけない。そのような体制がなければ、多様性がある会社とは言えませんし、いつまで経ってもイノベーションは生まれません。ですから、お困りのことがあれば、ぜひ相談してください。そして、この会をきっかけに、縦・横・ナナメのつながりを深めていただければ嬉しく思います。

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